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名古屋地方裁判所 昭和59年(ワ)100号 判決 1993年11月29日

当事者の表示

別紙当事者目録記載のとおり

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一  申立て

一  被告らは、原告に対し、各自、金二〇〇〇万円並びにこれに対する一〇〇号事件被告株式会社竹中工務店は昭和五九年一月二六日から、同事件被告株式会社倉吉サンピア及び同株式会社白兎設計事務所は同月二七日から、二九三一号事件被告両名は同年一〇月一二日から、四四五事件被告株式会社熊谷組は昭和六〇年三月六日から、同事件被告株式会社東北ニチイは同月七日から、八七三号事件被告大井建興株式会社は同年四月一〇日から、同事件被告西日本商事株式会社は同月一一日から、二二五四号事件被告は同年八月二日から、四九六号事件被告は昭和六一年三月一日から、一〇七四号事件被告は同年四月二五日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え(いずれも内金請求)。

二  仮執行宣言

第二  事案の概要

本件は、原告が被告らに対し、特許権侵害を理由に損害賠償金及び結果発生後の遅延損害金の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実等(以下、書証番号は、一〇〇号事件のものを指す。)

1  原告の特許権

(一) 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有する。

発明の名称 傾床型自走式立体駐車場におけるフロア構造

出願日 昭和五二年七月二〇日

出願公告日 昭和五七年七月二八日

登録日 昭和五八年五月二六日

登録番号 第一一四八六六三号

(二) 特許請求の範囲

「三六〇度の旋回走行によって一フロア分の高さを昇降するように上下方向に対し螺旋状に連続する車路に沿って駐車スペースを設けてなる傾床型駐車場を構成する基準階のフロアにおいて、ほぼ等勾配に形成された内外の路縁をもつ一対の相対向する傾斜平面状の直進部と、不等勾配に形成された内外の路縁をもつ一対の相対向する傾斜曲面状の直進部と、前記各直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ四つのコーナー部とにより矩形状に螺回するように形成された車路にはこの車路の外側周辺に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤと、前記直進部の内方に並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤとを臨設するとともに、前記アウトサイドパーキングエリヤには車両が車長方向に傾斜されずに駐車されるように緩勾配を車幅方向に対応する方向に対し一方的に付与したことを特徴とする傾床型自走式立体駐車場におけるフロア構造。」

2  本件発明の構成要件を分説すると、以下のとおりである。

A 三六〇度の旋回走行によって一フロア分の高さを昇降するように上下方向に対し螺旋状に連続する車路に沿って駐車スペースを設けてなる傾床型駐車場を構成する基準階のフロアにおいて、

B ほぼ等勾配に形成された内外の路縁をもつ一対の相対向する傾斜平面状の直進部と、

C 不等勾配に形成された内外の路縁をもつ一対の相対向する傾斜曲面状の直進部と、

D 前記各直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ四つのコーナー部とにより矩形状に螺回するように形成された車路には、

E この車路の外側周辺に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤと、

F 前記直進部の内方に並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤとを臨設するとともに、

G 前記アウトサイドパーキングエリヤには車両が車長方向に傾斜されずに駐車されるように緩勾配を車幅方向に対応する方向に対し一方的に付与したこと

H を特徴とする傾床型自走式立体駐車場におけるフロア構造。

3  本件発明の作用効果

車路の全体に昇り勾配をつけ、それを矩形の螺旋状に旋回連続させたもので、階高寸法を上昇するのに車路の全域を利用したものであるから、局部的な勾配部分で階高寸法を上昇する従来のものよりも、車路の勾配を緩やかにできるので、車路の全長が短くてもよいこととなり、駐車場の敷地面積を狭少にすることができるとともに、走行フィーリングを確保することができる(甲一八、弁論の全趣旨)。

4  被告らの行為

(一) 一〇〇号事件について

(1) 一〇〇号事件被告株式会社倉吉サンピア(以下「被告倉吉サンピア」という。)は、一般生活必需品物資の販売などを業とする会社であり、同事件被告株式会社竹中工務店(以下「被告竹中工務店」という。)は、建築施工を業とする会社であり、同事件被告株式会社白兎設計事務所(以下「被告白兎設計事務所」という。)は、建築設計監理を業とする会社である。

(2) 被告倉吉サンピアは、別紙イ号物件目録記載の駐車場(以下「イ号物件」という。)を新築させて所有し、これを使用している。イ号物件は、被告竹中工務店によって建築工事が、被告白兎設計事務所によって設計監理がそれぞれされ(ただし、被告兼被告補助参加人大井建興(以下「被告大井建興」という。)が下請としてしたとする設計の有無及び建築工事の内容については争いがある。)、昭和五八年九月三〇日ころ、被告倉吉サンピアに引き渡されたものである(弁論の全趣旨)。

(二) 二九三一号事件について

(1) 二九三一号事件被告東邦生命保険相互会社(以下「被告東邦生命保険」という。)は、生命保険などを業とする相互会社であり、同事件被告鹿島建設株式会社(以下「被告鹿島建設」という。)は、建築請負などを業とする会社である。

(2) 被告鹿島建設は、別紙ロ号物件目録記載の駐車場(以下「ロ号物件」という。)の建築工事をし(ただし、被告大井建興が一括下請をしたとの点については争いがある。)、被告東邦生命保険は、昭和五七年四月二〇日ころ、ロ号物件の引渡しを受け、これを所有し、使用している。

(三) 四四五号事件について

(1) 四四五号事件被告株式会社東北ニチイ(以下「被告東北ニチイ」という。)は、日用品、雑貨の卸及び小売などを業とする会社であり、同事件被告株式会社熊谷組(以下「被告熊谷組」という。)は、建築施工などを業とする会社である。

(2) 被告熊谷組は、別紙ハ号物件目録記載の駐車場(以下「ハ号物件」という。)の建築工事をし(ただし、被告大井建興が一括下請をしたとの点については争いがある。)、被告東北ニチイは、昭和五九年三月一九日にハ号物件を新築所有するに至り、これを使用している。

(四) 八七三号事件について

(1) 八七三号事件被告西日本商事株式会社(以下「被告西日本商事」という。)は、ドライブイン及びホテルの経営などを業とする会社であり、同事件被告大井建興株式会社は、建築施工などを業とする会社である。

(2) 被告大井建興は、別紙ニ号物件目録記載の駐車場(以下「ニ号物件」という。)の建築工事をし(ただし、東栄建設株式会社と共同企業体を構成している。)、被告西日本商事は昭和五九年一二月四日にニ号物件を新築所有するに至り、これを使用している。

(五) 二二五四号事件について

(1) 二二五四号事件被告株式会社西友(以下「被告西友」という。)は、日用品、雑貨の卸及び小売などを業とする会社である。

(2) 被告西友は、昭和五六年一二月四日に別紙ホ号物件目録記載の駐車場(以下「ホ号物件」という。)を新築所有するに至り、これを使用している(乙一五八、弁論の全趣旨)。

(六) 四九六号事件について

四九六号事件被告山本慎一(以下「被告山本」という。)は、昭和五七年六月三〇日に別紙へ号物件目録記載の駐車場(以下「へ号物件」という。)を新築所有するに至り、これを使用している。

(七) 一〇七四号事件被告株式会社宮交シティ(以下「被告宮交シティ」という。)は、昭和五八年二月二五日に別紙ト号物件目録記載の駐車場(以下「ト号物件」という。)を新築所有するに至り、これを使用している。

5  ヘ号物件は、本件発明の技術的範囲に属する。

二  争点に関する当事者の主張

1  イ号ないしホ号及びト号物件は、本件発明の技術的範囲に属するか。

(一) 一〇〇号事件(イ号物件)、二九三一号事件(ロ号物件)、四四五号事件(ハ号物件)及び二二五四号事件(ホ号物件)(いわゆるツインタイプ)について

(1) 原告

<1> イ号ないしハ号及びホ号物件(以下「イ号物件等」という。)は、本件発明と同一の構成を有する駐車場を共有車路を介して二つ合わせたいわゆるツインタイプの駐車場であるに過ぎず、その主要な構成及び作用効果は本件発明と同一であり、本件発明の技術的範囲に属するというべきである。

<2> 被告らは、上昇用車路、下降用車路の区別の点を差異として強調するが、イ号物件等の上昇用車路、下降用車路に特有の特徴はなく、共有車路もこれらを二つ合わせれば設計上当然に設けられるものであって、右は、当業者が土地の形状・大きさに対応して適宜僅かな設計変更にて建設が可能なものである。また、本件発明とイ号物件等との間のその他の差異も、土地の形状、大きさに対応して又は周知技術を用いてなされうる単なる設計的事項に過ぎない。すなわち、具体的な傾斜等の数値の差異(イ号、ロ号及びホ号物件)、下降用車路のコーナー部及び上昇用車路のコーナー部が平面に形成されていること(ホ号物件)、駐車場の一辺にアウトサイドパーキングエリヤが設けられていないこと(ホ号物件)、各々のアウトサイドパーキングエリヤの傾斜の数値の差異(イ号及びロ号物件)、共有車路が傾斜平面状の直進部とその直進部の両端にそれぞれ連なる水平な分岐車路とから構成されている点(ハ号物件)は、単なる設計的事項に過ぎないものである。

<3> 本件発明の明細書においては、車路を上り専用又は下り専用に用いてはいけない(すなわち、本件発明はツインタイプのフロア構造には用いられない)旨の技術的限定はされていないし、仮に本件発明からツインタイプが除かれていたとしても、イ号物件等は本件発明の重要度の高い技術的事項をすべて充足する以上、本件発明の利用発明(ないしは不完全利用)であり、本件発明の技術的範囲に属するものである。

(2) 被告ら(被告西日本商事、同大井建興、同山本及び同宮交シティを除く。

<1> 本件発明においては、駐車場の基準階は、矩形状のものであり、かつ、その基準階一杯を使用し、その外周に沿い、螺旋状に三六〇度(一回り)旋回して一フロア分の高さを昇降できるような矩形の車路を設けるという構成が必須要件とされており、またそれによって車路の勾配を緩和して、狭小な敷地を有効利用し、あるいは広い敷地の場合には、勾配を一層緩和できるという作用効果を奏し得るものである。

<2> イ号物件等の矩形状の基準階には、三六〇度の左回り走行によって一フロア分の高さを上昇する長方形の車路と、三六〇度の左回り走行によって一フロア分の高さを下降する長方形の車路が、中間の共有車路を介して一対となって設けられているのであって、前記要件を充足しないし、その作用効果も異なる。したがって、イ号物件等は、本件発明の技術的範囲に属さない。

<3> また、ハ号物件においては、その共有車路<3>は、「傾斜曲面状の直進部」、「傾斜曲面を持つコーナー部」には該当しないものであるから、本件発明の技術的範囲に属さないことは明らかである。

<4> イ号物件等が、本件発明の利用発明であるといえるためには、本件発明の特許要旨全部を含み、これをそっくり利用したものでなければならないところ、イ号物件等は、「ほぼ矩形に旋回することにより一周で一階分の高さを昇降して複数層の各階へ連続状に通じる走行用通路を左右に一対対向して設け、その一方を上り走行用、他方を下り走行用にするとともに、該一対の通路の一部を各層において重合させる」という構成を有する立体駐車場であって、本件発明の前提部分となる「矩形状の基準階のフロア一杯を、三六〇度旋回走行することにより一周で一階分の高さを昇降するように上下方向に対し螺旋状に連続する車路を有する傾床型駐車場」との要件(前記<1>の必須要件)を充足しない。したがって、原告の利用関係に関する主張は失当である。

(二) 八七三号事件(ニ号物件)について

(1) 原告

<1> ニ号物件は、本件発明とその主要な構成及び作用効果が同一であり、本件発明の技術的範囲に属するというべきである。

<2> 本件発明とニ号物件との具体的な傾斜等の数値の差異は、単なる設計的事項に過ぎない。なお、「ほぼ等勾配に形成された内外の路縁を持つ一対の傾斜平面状の直進部」に該当するABCD及びEFGHは、一パーセント程度不等勾配となっているが、実際に広い駐車場ではこの程度の勾配はほとんど等勾配に感じられ、当業者でさえ見分けがつかないものであって、実質上は等勾配であり、また、本件発明め特許請求の範囲においても「ほぼ等勾配」とされており、この程度の勾配はほぼ等勾配のうちに入るものである。

(2) 被告西日本商事及び同大井建興

<1> 本件発明は、「ほぼ等勾配に形成された内外の路縁を持つ一対の相対向する傾斜平面状の直進部」という要件を要するところ、ニ号物件においては「昇降車路<1>は、不等勾配(二・八三%と三・八〇%及び二・五〇%と三・八〇%)に形成された内外の路縁を持つ二つの傾斜曲面状の直進部(ABCDとEFGH)と不等勾配(八・一三%と四・七五%及び八・一三%と四・五二%)に形成された内外の路縁を持つ二つの傾斜曲面状の直進部(KCLEとDIFJ)を有する」ものであって、右要件を充足せず、本件発明の技術的範囲に属さない。

<2> 原告は、ニ号物件を特定するに当たり、直進部(ABCDとEFGH)が「傾斜曲面状の直進部」である事実を自白しており、原告の自白の撤回に対して異議がある。

(三) 一〇七四号事件(ト号物件)について(1) 原告

<1> ト号物件は、本件発明とその主要な構成及び作用効果が同一であり、本件発明の技術的範囲に属するというべきである。

<2> 本件発明とト号物件との具体的な数値の差異、出入口用の車路(RSTU)、右車路に外接するアウトサイドパーキングエリヤ(ト)(チ)が設けられていること及びコーナー部(KEMG)の外部におけるアウトサイドパーキングエリヤ(ハ)(ロ)が一部省略されている点は、土地の形状に合せて随時行い得る設計的事項に過ぎない。

ト号物件の直進部ABCDは、〇・五パーセントではあるけれども勾配を有する事実に変りはない。直進部ABCDを〇・五パーセントという緩勾配で形成した点は、他の三つの車路及び各コーナー部の勾配をそれぞれ僅かずつ増すことにより弾力的に吸収され、結果として本件発明の要旨に何ら実質的な変更を加えたことにはならないし、ト号物件は、本件発明の作用効果とほぼ同様の作用効果を奏している。

(2) 被告宮交シティ

<1> 本件発明は、「ほぼ等勾配に形成された内外の路縁を持つ一対の相対向する傾斜平面状の直進部と、不等勾配に形成された内外の路縁をもつ一対の相対向する傾斜曲面状の直進部」という要件を要するところ、ト号物件においては「昇降車路<1>は、等勾配(三・四九四%)に形成された内外の路縁をもつ傾斜平面状の直進部(EFGH)と中央に向って車両の上り方向及び下り方向のいずれからも〇・五%の昇り勾配をもつほぼ水平な直進部(ABCD)と不等勾配(三・四九一%と約九・五%)に形成された内外の路縁をもつ二つの傾斜曲面状の直進部(JCKEとDCFP)を有する」ものであって、右要件を充足せず、本件発明の技術的範囲に属さない。

自走式立体駐車場の技術分野においては、〇・五パーセント程度の勾配は、いわゆる「水勾配」(排水を可能にする)として勾配がないもの、すなわち水平と目されている。

<2> 原告は、ト号物件を特定するに当たり、直進部(ABCD)が「ほぼ水平な直進部」である事実を自白しており、原告の自白の撤回に対して異議がある。

2  職務発明に基づく通常実施権について

(一) 被告ら

イ号ないしト号物件は、以下に述べるとおり、本件特許権につき被告大井建興の有する職務発明による通常実施権の範囲内で製造されたものであるから、被告らは、右通常実施権を援用することにより、イ号ないしト号物件を適法に建築し、譲渡し、又は使用できるものである。

(1) 堀田正俊の職務発明

<1> 原告代表者である堀田正俊(以下「堀田」という。)は、被告大井建興在職中の昭和五二年六月ころ、被告大井建興の設計スタッフ全員と共同で本件発明を完成した。

<2> 被告大井建興は、建設業、駐車場の経営等を目的とする会社であり、自走式立体駐車場の設計施工の営業をしている。したがって、本件発明は、被告大井建興の業務範囲に属する。

<3> 堀田は、昭和四九年四月一日から昭和五三年六月二〇日まで、被告大井建興に在職し、開発部、企画部、営業第一部の部長を歴任し、その間、事実上、常に立体駐車場工事部門の企画設計、技術開発等の業務の最高責任者の地位にあった。したがって、本件発明は、従業者たる堀田の職務に属する。

<4> 原告は、堀田から、本件発明につき特許を受ける権利を承継し、前記一1記載のとおり特許を受けた。

(2) よって、被告大井建興は、本件特許権について特許法三五条一項に基づき通常実施権を有する。

(3) 被告らによる被告大井建興の通常実施権の援用

<1> 一〇〇号事件(イ号物件)について

イ 職務発明による通常実施権を有する者が右発明にかかる建造物の設計業務を分担し、第三者(施工者)が右設計に従って建築工事を分担した場合には、施工者は設計図に示されたとおりの建造物をそのまま建築するものであり、また設計と施工とが表裏一体となって右建造物の建築行為が完結するものであるから、施工者は設計者と共同して当該発明を実施しているものというべきである。そして、そのような場合においては、施工者は、右設計者の有する通常実施権を援用しうるというべきである。

ロ 本件では、設計については、被告大井建興が倉吉サンプラザアビルの駐車場部分(イ号物件)、被告白兎設計事務所がその余の部分を分担し、施工については、被告大井建興が駐車場部分(イ号物件)の鉄骨工事を、被告竹中工務店がその余の部分を分担したものである(なお、イ号物件の車路及び駐車スペースの勾配その他の構造は、鉄骨工事の実施によって一義的に決定されるものであって、右工事がされれば、本件発明の実施工事(生産)は、実質上ほぼ完結したといってよいものである。)。

ハ したがって、被告白兎設計事務所及び同竹中工務店は、いずれも被告大井建興の通常実施権を援用して適法にイ号物件を生産できるものであり、右被告らからイ号物件の引渡しを受けた被告倉吉サンピアも、同様に適法に使用できるものである。

<2> 二九三一号事件(ロ号物件)について

イ 被告大井建興は、昭和五六年八月五日ころ、被告鹿島建設から、代金四億四〇〇〇万円にてロ号物件の建築工事全部を請け負い、自らの計算において右工事を完成し、ロ号物件を同被告に引き渡した。

ロ したがって、ロ号物件は、被告大井建興が本件特許権の通常実施権に基づき製造したものであるから、引渡しを受けた被告鹿島建設及び注文者たる被告東邦生命は、右通常実施権を援用してロ号物件を適法に生産ないし使用できるものである。

<3> 四四五号事件(ハ号物件)について

イ 被告大井建興は、昭和五八年一一月一八日ころ、被告熊谷組外二社共同企業体から、代金三億一四五〇万円にてハ号物件の建築工事全部を請け負い、自らの計算において右工事を完成し、ハ号物件を右共同企業体に引き渡した。

ロ したがって、ハ号物件は、被告大井建興が本件特許権の通常実施権に基づき製造したものであるから、引渡しを受けた被告熊谷組及び注文者たる被告東北ニチイは、右通常実施権を援用してハ号物件を適法に生産ないし使用できるものである。

<4> 八七三号事件(ニ号物件)について

イ 被告大井建興外一社共同企業体は、昭和五九年六月二七日ころ、被告西日本商事から、代金二億〇一六〇万円(但し、被告大井建興持分)にてニ号物件の建築工事全部を請け負い、自らの計算において右工事を完成し、ニ号物件を被告西日本商事に引き渡した。

ロ したがって、ニ号物件は、被告大井建興が本件特許権の通常実施権に基づき製造したものであるから、注文者たる被告西日本商事は、右通常実施権を援用してニ号物件を適法に使用できるものである。

<5> 二二五四号事件(ホ号物件)について

イ 被告大井建興外一社共同企業体は、昭和五六年六月二日ころ、被告西友から、代金五億二〇〇〇万円にてホ号物件の建築工事全部を請け負い、自らの計算において右工事を完成し、ホ号物件を被告西友に引き渡した。

ロ したがって、ホ号物件は、被告大井建興が本件特許権の通常実施権に基づき設計・施工したものであるから、注文者たる被告西友は、右通常実施権を援用してホ号物件を適法に使用できる。

<6> 四九六号事件(ヘ号物件)について

イ 被告大井建興は、昭和五六年一〇月一二日ころ、被告山本から、代金三億二二〇〇万円にてヘ号物件の建築工事全部を請け負い、自らの計算において右工事を完成し、ヘ号物件を同被告に引き渡した。

ロ したがって、ヘ号物件は、被告大井建興が本件特許権の通常実施権に基づき設計・施工したものであるから、注文者たる被告山本は、右通常実施権を援用してヘ号物件を適法に使用できる。

<7> 一〇七四号事件(ト号物件)について

イ 被告大井建興は、昭和五七年一〇月一日ころ、株式会社竹中工務店から、代金二億七〇〇〇万円にてト号物件の建築工事全部を請け負い、自らの計算において右工事を完成し、ト号物件を竹中工務店に引き渡した。

ロ したがって、ト号物件は、被告大井建興が本件特許権の通常実施権に基づき設計・施工したものであるから、注文者たる被告宮交シティは、右通常実施権を援用してト号物件を適法に使用できる。

(二) 原告

(1) 被告大井建興が、本件特許権につき職務発明による通常実施権を有する旨の主張は、否認ないし争う。

(2) 仮に、被告大井建興が、本件特許権につき職務発明による通常実施権を有するとしても、以下に述べるように、イ号ないしホ号及びト号物件の建築ないし使用は、右通常実施権の範囲を逸脱しているので、被告ら(ただし、被告山本を除く。)は、右通常実施権の援用によって本件特許権侵害の責任を免れ得るものではない。

<1> 一〇〇号事件(イ号物件)について

本件発明は立体駐車場についての発明であるところ、被告らの主張を前提としても、被告大井建興は、イ号物件につき設計図の作成及び鉄骨工事を下請として行ったに過ぎず、イ号物件のその余の部分につき建築したのは、被告竹中工務店及び第一建設工業である。したがって、被告大井建興において被告竹中工務店らに再実施権を許諾できない以上、同被告は、被告大井建興の有する通常実施権の援用によっては本件特許権侵害の責任を免れることはできない。

<2> 二九三一号事件(ロ号物件)について

ロ号物件に関する被告大井建興の受注が、被告鹿島建設から下請としてされたものであるとしても、建設業法においては一括下請は禁止されているから、右は部分受注であるはずである。被告大井建興がロ号物件の一部を建築したとしても全体としての建築に被告鹿島建設が関与している以上、それは被告大井建興が第三者たる同被告に実施権を許諾したことにほかならない。そして、被告大井建興においては再実施権を許諾できないのであるから、被告鹿島建設は、その建築行為につき、被告大井建興の有する通常実施権の援用によっては本件特許権侵害の責任を免れることはできないものである。

<3> 四四五号事件(ハ号物件)について

ハ号物件に関する被告大井建興の受注が、被告熊谷組から下請としてされたものであるとしても、建設業法においては一括下請は禁止されているから、右は部分受注であるはずである。被告大井建興がハ号物件の一部を建築したとしても全体は被告熊谷組が施工したというのであれば、被告大井建興において同被告に再実施権を許諾できない以上、右は通常実施権の範囲を超えるものである。したがって、同被告は、被告大井建興の有する通常実施権の援用によっては本件特許権侵害の責任を免れることはできない。

<4> 八七三号事件(ニ号物件)について

被告大井建興らが共同企業体でニ号物件を受注したとしても、被告大井建興において再実施権を許諾できない以上、実施権のない者と共同して建築することは、通常実施権の範囲を超えるものである。したがって、注文者たる西日本商事はもとより被告大井建興においても全体として本件特許権侵害の責任を免れることはできない。

なお、数人の者が共同して特許発明に係る駐車場を建築する場合に、一人でも当該特許権の実施権を有すれば特許権侵害とはならない旨の主張は、その他人に実施権を分け与えることに等しいものであるから失当である。

<5> 二二五四号事件(ホ号物件)について

被告大井建興が他の一社と共同でホ号物件の設計・施工をしたとしても、被告大井建興において再実施権を許諾できない以上、実施権のない者との共同製造は、通常実施権の範囲を超えるものである。したがって、注文者たる被告西友は被告大井建興の有する通常実施権の援用によっては、本件特許権侵害の責任を免れることはできない。

なお、数人の者が共同して特許発明に係る駐車場を建築する場合に、一人でも当該特許権の実施権を有すれば特許権侵害とはならない旨の主張は、その他人に実施権を分け与えることに等しいものであるから失当である。

<6> 一〇七四号事件(ト号物件)について

ト号物件に関する被告大井建興の受注が、竹中工務店から下請としてされたものであるとしても、建設業法においては一括下請は禁止されているから、右は部分受注であるはずである。被告大井建興がト号物件の一部を建築したとしても、全体としての製造に竹中工務店が関与しているのであれば、被告大井建興において竹中工務店に再実施権を許諾できない以上、右は通常実施権の範囲を超えるものである。したがって、注文者たる被告宮交シティは、被告大井建興の有する通常実施権の援用によっては本件特許権侵害の責任を免れることはできない。

3  先使用権に基づく通常実施権について

(一) 被告ら

(1) 被告大井建興は、新潟丸大百貨店から駐車場新築工事の設計を依頼され、昭和五二年二月ころより、被告大井建興の社員であった堀田ほかスタッフ全員の共同により連続傾床型自走式立体駐車場の研究開発を行い、同年五月ころ、本件発明の技術的範囲に属する別紙先使用物件目録記載の連続傾床型自走式立体駐車場を完成した。そして、被告大井建興は、同月一六日ころ、同百貨店設計図を作成して右施主に提出し、当時被告大井建興の一〇〇パーセント子会社であった原告名義をもって右設計監理を担当し(施工については佐藤工業株式会社が担当した。)、同年九月ころ、六階七層傾床型三四七台収容の前記連続傾床型自走式立体駐車場を竣工し同百貨店に引き渡した。

(2) したがって、被告大井建興は、本件特許権出願の際、現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者、または少なくともその事業の準備をしている者に該当するから、特許法七九条に基づき、本件特許権について通常実施権を有する。

(3) 被告大井建興を除く被告らの通常実施権の援用

各事件における被告大井建興及びその余の被告らのイ号ないしト号物件の製造の態様は、前記2(一)(3)記載のとおりである。よって、被告大井建興を除く各被告は、いずれも被告大井建興の右通常実施権を援用して適法にイ号ないしト号物件を建築又は使用できる。

(二) 原告

被告大井建興は、本件特許権につき先使用権に基づく通常実施権を有していない。よって、その余の被告らが右通常実施権を援用できる旨の主張は争う。

4  損害

(一) 原告

(1) 一〇〇号事件について

本件発明を実施したイ号物件は、従来のスキップ工法の場合と比して七三台の車が増加収容可能となった。そして、立体駐車場において車一台当たりに必要な建築面積は三六・五〇八〇平方メートル、その建築費は一平方メートル当たり五万円を下らないことから、本件発明を実施したことによって一〇〇号事件被告らが得た利益は、一億三三二五万四二〇〇円(七三×三六・五〇八〇×五万)である。したがって、原告は、本件特許権侵害により、右同額の損害を受けた。

(2) 二九三一号事件について

二九三一号事件被告らが、本件発明を実施したことにより得た利益の総額は、七二二八万五九一六円であり、その詳細は、別紙算定書1のとおりである。

したがって、原告は、本件特許権侵害により、右同額の損害を受けた。

(3) 四四五号事件について

<1> 被告東北ニチイは、ハ号物件を使用することにより五〇〇台の車が収容可能となった。仮に、同一台数の車を収容できる駐車場を本件発明を実施しないで従来のスキップ方式により建築したとすれば、その建築費はハ号物件のそれに比して八〇〇〇万円余分に要したものである。被告東北ニチイは本件発明を実施したことにより右金額相当の利益を得たのであるから、原告の本件特許権を侵害されたことによる損害額は、八〇〇〇万円である。

<2> 被告熊谷組は被告東北ニチイと共同して本件特許権侵害を行ったものであるから、共同不法行為者として原告に対し連帯して八〇〇〇万円を支払う義務がある。

(4) 八七三号事件について

八七三号事件被告らが本件発明を実施したことにより得た利益の総額は、八七一七万〇五七七円であり、その詳細は別紙算定書2のとおりである。

したがって、原告は、本件特許権侵害により右同額の損害を受けた。

(5) 二二五四号事件について

被告西友が本件発明を実施したことにより得た利益の総額は、一億三九八〇万六二五五円であり、その詳細は別紙算定書3のとおりである。

したがって、原告は、本件特許権侵害により右同額の損害を受けた。

(6) 四九六号事件について

被告山本が本件発明を実施したことにより得た利益の総額は、五四九八万八四四〇円であり、その詳細は別紙算定書4のとおりである。

したがって、原告は、本件特許権侵害により右同額の損害を受けた。

(7) 一〇七四号事件について

被告宮交シティが本件発明を実施したことにより得た利益の総額は、三九八九万七五五〇円であり、その詳細は別紙算定書5のとおりである。

したがって、原告は、本件特許権侵害により、右同額の損害を受けた。

(二) 被告ら

(1) 一〇〇号事件について

原告の主張は否認する(ただし、イ号物件の当時の建築費が一平方メートル当たり五万円を下らないことは認める。)。

(2) その余の事件について

原告の主張は否認ないし争う。

第三  争点に対する判断

一  被告各物件(ヘ号物件を除く。)は、本件発明の技術的範囲に属するか。

1  イ号物件

(一) まず、本件発明の特許請求の範囲中には、「三六〇度の旋回走行によって一フロア分の高さを昇降するように上下方向に対し螺旋状に連続する車路」と記載されている(構成要件A)ので、その車路は、三六〇度の旋回走行により一フロア分の高さを昇ることができ、また、三六〇度の走行により一フロア分の高さを降りることができる構造のものでなければならないことは明らかであり、「……旋回走行によって一フロア分の高さを昇降するように……連続する車路」という表現からして、その車路は上昇と下降の両用に用いられる車路であると解するのが最も字義に適っているといえる。

また、本件発明が傾床型の自走式の立体駐車場におけるフロア構造に関するものであって、構成要件BないしGから明らかなように車路の構造と車路の両側への駐車スペースの配置の仕方に特徴があることからすると、車両の昇降経路はフロア構造の発明に欠くことができない事項というべきであるから、特許請求の範囲の記載に基づいて本件発明の技術的範囲を定めるに当たっては、その特許請求の範囲の中に車両の昇降経路、すなわち、上昇に用いる車路と下降に用いる車路が示されているとの前提の下に本件発明の特許請求の範囲の記載を解釈すべきところ、本件発明の特許請求の範囲には、一対の相対向する傾斜平面状の直進部(構成要件B)と一対の相対向する傾斜曲面状の直進部(構成要件C)と各直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ四つのコーナー部とにより矩形状に螺回するように形成された車路(構成要件D)しか記載されておらず、そのような車路が複数存在することを予定している文言は見当たらないから、前記のように「昇降するように……連続する車路」と記載されていることからしても、本件発明の特許請求の範囲は、全体として見ても、矩形状に螺回するように形成された一連の車路が車両の上昇にも、下降にも用いられるとの前提で記載されていると見るのが最もその文言に適っているというべきである。

そこで、右の点につき、さらに本件特許の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明及び図面を検討するに、別紙特許公報記載のとおり、本件特許の願書には、傾床型駐車場の開発経過を示すために第1ないし第3図(いずれも基準階の平面図)が添付され、本件発明の適用例を示すため、第4図(基準階を示す平面図)、第5図(拡大斜視図)が添付されているが、いずれの図においても、車路は対面通行を行うものとして表示されており、明細書の発明の詳細な説明欄には、本件発明は第3図(前示のように対面通行の車路が記載されている。)によって示した例を改良したものである旨記載されている。そして、明細書の発明の詳細な説明欄には、「上述の説明からも理解できるように、上述の実施例の変形例として、第4図に示す平面図において、近接する二個所のアウトサイドパーキングエリア2(例えばGH区間とJK区間)を含まない形式の駐車場についても支障なく施工することができ、この場合には、敷地はさらに狭少で良いことになる」と記載しながら、そのような駐車場二つを向い合せて接続し、一方の車路を上昇用の車路、他方の車路を下降用の車路とする例等、いわゆるツインタイプの駐車場の例については全く触れていない。

そうすると、本件発明の特許請求の範囲に記載されている「車路」とは、上昇用にも下降用にも使用される一経路の車路と解すべきことになる。

したがって、上昇用の車路、下降用の車路という二経路の車路からなるイ号物件は、一経路部分のみを取り上げて本件発明と構成を対比をした場合でも、本件発明の構成要件Aを充足せず、本件発明の技術的範囲に属さないというべきである(前示のように、自走式立体駐車場のフロア構造については、車両の上昇経路と下降経路とは発明の構成に欠くことのできない事項というべきであるから、イ号物件は、本来、二経路の車路部分が一つのフロア構造を形成していると見るべきである。そして、そのような二経路の車路部分からなるイ号物件が本件発明の構成要件Aを充足していないことは明らかである。)

(二) 次に、右に述べたように、イ号物件は、本件発明の構成要件を充足していないのであるから、これが本件発明の利用発明に当たらないことは明らかである。また、イ号物件は、上昇用車路と下降用車路という二経路の車路を設けたことにより、車両の対面交通による事故発生の危険や渋滞を避け得るといった本件発明にはない特別の作用効果を有するものと認められるから、不完全利用として本件特許権を侵害するとの原告の主張は、その余の点につき判断するまでもなく失当である。

2  ロ号、ハ号及びホ号物件

右各物件は、イ号物件と同様に上昇用車路部分と下降用車路部分とからなるいわゆるツインタイプの駐車場であるから、イ号物件と同じ理由により本件発明の構成要件Aを充足せず、また、本件発明の利用発明にも不完全利用にも当たらない。

したがって、右各物件は、本件発明の技術的範囲に属さない。

3  ニ号物件

(一) ニ号物件の傾斜曲面状の直進部(ABCD、EFGH)が、本件発明の構成要件Bにいう「ほぼ等勾配に形成された内外の路縁を持つ一対の相対向する傾斜平面状の直進部」に該当するといえるかどうかについて検討する(本件発明のその余の構成要件充足性については、被告はこれを明らかに争わない。)。

(二) 構成要件Bにいう「ほぼ等勾配」とは、どの程度の不等勾配まで許容する趣旨であるかについて、本件公報には特に記載はないが、「ほぼ等勾配の傾斜平面状の直進部」を形成する理由の一つは、これによってインサイドパーキングエリヤ、等勾配直進部及びアウトサイドパーキングエリヤに連なる面をすべて等勾配で形成して(本件公報の第4図参照)、容易に駐車スペースにおいて車長方向に無傾斜で駐車することができるようにする点にあると解される(車路の路幅方向に傾斜があると、駐車スペースに車を無勾配で駐車できるようにするために、車路と駐車スペースに段差を形成するなど、その工事が煩雑となると考えられる。)。したがって、車路の路幅方向の傾斜が極めて小さく右の観点から見て路幅方向に無傾斜の場合と実質的に異ならない程度のものである場合には、これを構成要件Bにいう「ほぼ等勾配」の範囲に含まれると解すべきである。

(三) ニ号物件の傾斜曲面状の直進部(ABCD)の路縁の勾配は二・八三パーセントと三・八〇パーセント、同じく直進部(EFGH)の路縁の勾配は二・五パーセントと三・八〇パーセントとなっており、路縁の勾配の差は〇・九七パーセント及び一・三パーセントに過ぎない。そして、弁論の全趣旨によれば、この種の建築物において水勾配として床面に〇・五パーセント程度の勾配を設けることは通常行われているものと認められるから、右の程度の路縁の勾配の差は、車路の車幅方向の傾斜としては無傾斜の場合と実質的に異ならない程度のものと解される(なお、原告は、右の「傾斜曲面状の直進部」が傾斜曲面状であることを前提として「ほぼ等勾配に形成された傾斜平面状の直進部」に含まれると主張しているのであるから、自白の撤回はないと解され、この点に関する被告らの主張は失当である。)。

(四) 以上によれば、ニ号物件は、本件発明の技術的範囲に属する。

4  ト号物件

ト号物件の直進部(ABCD)は、「中央に向って車両の上り方向及び下り方向のいずれからも〇・五%の昇り勾配をもつ」というのであるから、ほぼ水平な面というべきであり、その結果、ト号物件は、本件発明の構成要件Bにいう「ほぼ等勾配に形成された内外の路縁をもつ一対の相対向する傾斜平面状の直進部」という要件を充足しないものと解される。

そして、右のような構造のため、作用効果の点においても、ト号物件の直進部(ABCD)は、階高寸法の上昇に寄与しないこととなる。

したがって、ト号物件は、本件発明の技術的範囲に属さない。

5  以上によれば、イ号ないしハ号、ホ号及びト号物件は、本件発明の技術的範囲に属さないから、一〇〇号事件(イ号物件)、二九三一号事件(ロ号物件)、四四五号事件(ハ号物件)、二二五四号事件(ホ号物件)及び一〇七四号事件(ト号物件)についての原告の請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないというべきである。

そして、ニ号及びヘ号物件については、いずれも本件発明の技術的範囲に属するものであるので、以下、抗弁について判断する(なお、前記第二の一4の事実によれば、ロ号物件は本件出願公告前に完成され引渡しがされているのであるから、ロ号物件を建築した被告鹿島建設については、その余の点につき判断するまでもなく、本件特許権を侵害したものでないことは明らかである。)。

二  職務発明に基づく通常実施権について

1  まず、本件発明の発明者(堀田正俊)が本件発明をするに至った行為が、被告大井建興における堀田正俊の現在又は過去の職務に属するものであったか否かについて検討する。

(一) 証拠(甲一ないし一八、乙一九、二〇、二五、二六、二八、三一ないし三四、五四、八一、八二、八五、八八、九一、九二、乙九五の一ないし三、乙一〇三、一一六、一二六ないし一四二、一四四ないし一四七、一四九)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) 被告大井建興は、昭和二八年四月、社名を大井木材株式会社、主要な営業目的を木造ハウスの製作、販売、施工として設立され、昭和三八年三月、社名を大井建興株式会社、主要な営業目的を大井ハウス製作(鋼製)、販売等に変更し、昭和四四年ころから立体駐車場のプレハブ工法の研究にとりかかり、昭和四六、七年ころからは自転車置場の研究にもとりかかり、昭和五〇年八月には主要な営業目的を建設業、建設設計業務等に変更して現在に至っている。

(2) 堀田は、昭和四三年四月、本社営業部次長として被告大井建興に入社したが、昭和四六年三月一旦退社した。そして、日本パーキング建設株式会社(以下「日本パーキング」という。)において、プレハブ工法による立体駐車場建設に関する業務等に携わった。

(3) 堀田は、昭和四九年三月、日本パーキングを退社し、同年四月一日、被告大井建興に再入社して本社開発部長となり、同年六月二一日、開発部の名称変更により企画部長となり、当初は主として自転車置場の開発に、昭和五〇年初めころからは主として泡風呂(バブルバス)の販売に従事し、昭和五一年一月一五日、本社営業第一部長として自動車の駐車場に関する業務を担当するようになった。

(4) 被告大井建興の本社業務分掌規定によれば、企画部長は、新商品の企画・開発、従来商品の技術改良とともに、特許、実用新案その他工業所有権の法的調査、開発、取得及び保全に関する事項を分掌事項の一つとし、営業部長は、パークの営業に関する事項を行うこととされていた。

(5) 被告大井建興は、設計と施工を分離するため、全額出資して、昭和五一年四月一日、駐車場の設計監理、計画調査及び経営指導を目的とする原告を設立し、堀田を被告大井建興の営業第一部長を兼ねたまま原告の代表取締役とした。なお、堀田は、昭和五二年二月ころに一級建築士の資格を取得し、そのころから、被告大井建興の工事課が堀田のもとに編入されて、工事関係も統轄するようになった。

(6) 被告大井建興は、「連続傾床型自走式立体駐車場」に関する発明を昭和五一年四月一三日(特願昭五一-四二二一三号。以下「第一発明」という。)及び同年七月一日(特願昭五一-七九一三八号。以下「第二発明」という。)に、それぞれ特許出願したが、発明者はいずれも堀田であり、その出願書に添付された明細書に記載された特許請求の範囲は、次のとおりであった。

第一発明

「(1) 駐車可能な緩やかな勾配の傾斜路によって複数層の各階に連続する車両走行用の通路を構成し、この通路の片側あるいは両側に通路と同一面で連なる複数の駐車区画を設けたことを特徴とする連続傾床型自走式立体駐車場。

(2) 駐車可能な緩やかな勾配の傾斜路によって複数層の各階に連続する車両走行用の通路を上り走行車線専用の通路と下り走行車線専用の通路とに分けて配設するとともに、上り走行車線専用通路と下り走行車線専用通路との一部を各階においてそれぞれ重合させ、これらの通路の片側あるいは両側に通路と同一面で連なる複数の駐車区画を設けたことを特徴とする連続傾床型自走式立体駐車場。」

第二発明

「近接して双立するフロア群の一方側と他方側との各フロアは車両が駐車しうる勾配を持ち、交互に上端縁部と下端縁部が同じ高さ関係となる千鳥状に配置していて、各フロアは車両が通る車両通行区と該車両通行区に沿って特定された駐車区からなり、一方側のフロア群のフロアと他方側のフロア群のフロアとは相互の高さ関係が同じとなる端縁部において車両の通行専用の変形急勾配の傾斜連絡路で連結され、両フロア群の各フロアの車両通行区はほぼ螺旋状にひとつづきに連絡されている構造を含むことを特徴とする連続傾床型自走式立体駐車場。」

(7) 被告大井建興は、第一発明及び第二発明を青山パーキングビル及び新岐阜駅前駐車場において実施したが、青山パーキングビルの新築工事及び新岐阜駅前駐車場の新築設計が完了したのは、いずれも昭和五一年一一月であった。

(8) 被告大井建興は、丸大百貨店駐車場の建築工事に関する設計業務を、工事請負人である佐藤工業株式会社から原告が代金八〇〇万で請け負い、これを原告から代金七〇〇万円で下請した。そして、堀田が責任者となり、被告大井建興の社員であった小島秀夫、石川理及び余語実宏が関与して、昭和五一年二月ころから種々の案を検討し、昭和五二年四月ころに第二発明による設計図が作成されたが、最終的には、堀田の発案に係る本件発明と同一の技術思想に基づくフロア構造のものが最も駐車効率がよいとの結論に達し、同年五月ころに本件発明と同一の技術思想に基づく図面が作成され、同年六月に実施設計図が作成されるに至った。

なお、堀田は、右設計図の完成後も、これが公知となることを慮って、本件出願まで、施主に対しても右設計図を見せなかった。

(9) 同年七月二〇日、原告が本件発明につき特許出願したが、これは、原告の代表者である堀田の強い希望により、被告大井建興がこれを承諾したためであった。

(10) 堀田は、昭和五三年三月二一日に被告大井建興を定年退職した後も引き続き嘱託として勤務し、同年六月二〇日に被告大井建興を退社したが、以後も原告の代表取締役として現在に至っているところ、その間、同月二七日には被告大井建興の同意のもとに原告につき増資をして、原告の持ち株の割合を被告大井建興が二分の一、堀田が二分の一になるようにした。なお、堀田は、被告大井建興在職中は同被告から給与の支給を受けており、原告から給与ないし報酬を受けたことはなかった。

(二) 右の事実によれば、堀田は、昭和四九年四月に被告大井建興に再入社した後、第一発明及び第二発明の完成を経て、丸大百貨店駐車場の設計を通じて本件発明をしたものというべきである。別件における供述調書(乙一三〇、一三二、一四〇、一四七)中には、堀田は、昭和四七年暮ころには本件発明を完成していた旨の供述記載が存するけれども、右各供述内容を裏付ける客観的な証拠に欠けるし、本件出願の約一年余り前に第一発明及び第二発明が出願され、その後、その実施に当たる駐車場が建築ないし設計され、本件出願がされる直前になって、丸大百貨店駐車場の設計を通じて本件発明が完成されたという客観的な事実経過に照らし、右各書証は、採用することができない。

(三) したがって、堀田が本件発明をするに至った行為は、被告大井建興における堀田の発明当時の職務に属するものであったというべきである。

2  使用者(被告大井建興)の業務範囲について

右1の事実によれば、被告大井建興は、建設業、駐車場の経営等を目的とする会社であり、自走式立体駐車場の設計施工の営業をしているのであるから、本件発明が、被告大井建興の業務範囲に属することは明らかである。

3  特許を受ける権利の承継について

前記1(一)(9)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、堀田から本件発明につき、特許を受ける権利を承継し、本件発明について特許を受け、本件特許権を有するに至ったものと認められる。

4  通常実施権の行使について

右1ないし3によれば、被告大井建興は、本件特許権につき、特許法三五条一項により、職務発明に基づく通常実施権を有することになるので、以下、ニ号及びヘ号物件が、被告大井建興において右の通常実施権に基づいて建築したものといえるか否かについて検討する。

(一) ニ号物件について

前記第二の一4の事実及び証拠(乙二三ないし二五、一五六、一五七)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) 被告大井建興(福岡支店)は、昭和五九年六月二七日、被告西日本商事から、東栄建設株式会社(以下「東栄建設」という。)との共同企業体により、西日本商事所有の立体駐車場となる賑橋パーキングセンター(ニ号物件)新築工事につき、本体工事及び設備・その他の工事を合わせて代金二億〇一六〇万円で受注した。

(2) 右工事の内容は、本体工事として、共通仮設工事、建築工事を、設備・その他工事として、電気設備工事、給排水衛生設備工事、消火設備工事、空調設備工事、昇降機設備工事、自動料金計算工事等を行うものであった。

(3) 契約書においては、まず被告大井建興、次いで東栄建設の順序で請負側の記名押印がされており、被告大井建興と東栄建設との請負代金の取り分の比率は被告大井建興が六割、東栄建設が四割であった。

(4) 被告大井建興及び東栄建設は、昭和五九年一二月四日ころ、右工事を完成して、ニ号物件を被告西日本商事に引き渡した。

(5) 被告大井建興は、ニ号物件の工事受注以前からイ号ないしハ号及びホ号ないしト号物件などの多数の同種駐車場の設計・施工を行っている。

右(1)ないし(5)の各事実によれば、被告大井建興の有する傾床型自走式立体駐車場についての設計・施工の技術・ノウハウ、ニ号物件と同種の駐車場の設計・施工の経験、請負契約書における記名押印の順序、請負代金の取り分などからして、右契約は東栄建設と共同企業体の形態で締結されてはいるが、フロア構造の工事という点では、被告大井建興が主導的立場に立ち、東栄建設は実質的には被告大井建興の指示のもとその補助として製造に関与したに過ぎないものと認められる。

したがって、ニ号物件は、被告大井建興がその通常実施権に基づき建築したものと認めることができる。

原告は、被告大井建興と東栄建設が共同企業体として受注しているから共同製造であるとして通常実施権の範囲を超えると主張するが、発明の実施は、事実行為であるから、通常実施権に基づくものか否かは工事内容の実質により決定するのが相当である。

(二) ヘ号物件

証拠(乙一五九)によれば、被告大井建興(大阪支店)は、昭和五六年一〇月一二日、被告山本から同被告所有の立体駐車場となるOTCセンタービル立体駐車場(ヘ号物件)新築工事の発注を受け、右工事を金額三億二二〇〇万円で受注したことが認められ、右によれば、被告大井建興は、被告山本からヘ号物件につき工事全部を受注して建築したものと認めることができる。

したがって、ヘ号物件は被告大井建興の有する通常実施権の行使として建築されたものということができるので、被告山本がこれを使用することは適法であって、本件特許権の侵害には当たらないというべきである。

5  以上によれば、ニ号及びヘ号物件は、いずれも、被告大井建興が有する本件特許権の通常実施権に基づいて建築されたものということができるから、被告大井建興がニ号物件を建築し、これを注文主に引き渡した行為、被告西日本商事がニ号物件を使用する行為及び被告山本がヘ号物件を使用する行為は、いずれも、本件特許権の侵害には当たらないというべきである。

したがって、原告の八七三号事件(ニ号物件)及び四九六号事件(ヘ号物件)に関する請求は、いずれも理由がない。

第四  結論

以上の次第で、原告の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)の負担につき、民事訴訟法八九条、九四条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 後藤博 裁判官 入江猛)

(別紙)

当事者目録

名古屋市中村区名駅南四丁目一〇番一八号

各事件原告 株式会社総合駐車場コンサルタント

右代表者代表取締役 堀田正俊

右訴訟代理人弁護士 安藤恒春

同右 内藤義三

右輔佐人弁理士 足立勉

倉吉市大正町二丁目六一番地二

一〇〇号事件被告 株式会社倉吉サンピア

右代表者代表取締役 宇崎正雄

大阪市東区本町四丁目二七番地

同事件被告 株式会社竹中工務店

右代表者代表取締役 竹中統一

鳥取市西町二丁目一二三番地

同事件被告 株式会社白兎設計事務所

右代表者代表取締役 石尾博久

名古屋市中区栄一丁目三一番四一号

右被告三名補助参加人 大井建興株式会社

右代表者代表取締役 大井友次

右被告三名及び右補助参加人訴訟代理人弁護士 富岡健一

同右 四橋善美

同右 高沢新七

右被告三名訴訟代理人弁護士 木村静之

右被告三名及び右補助参加人復代理人弁護士 植村元雄

同右 尾西孝志

同右 瀬古賢二

同右 舟橋直昭

右被告三名及び右補助参加人輔佐人弁理士 石田喜樹

東京都渋谷区渋谷二丁目一五番一号

二九三一号事件被告 東邦生命保険相互会社

右代表者代表取締役 太田新太郎

右訴訟代理人弁護士 小木郁哉

東京都港区元赤坂一丁目二番七号

同事件被告 鹿島建設株式会社

右代表者代表取締役 鹿島昭一

右訴訟代理人弁護士 清水稔

名古屋市中区栄一丁目三一番四一号

右被告二名補助参加人 大井建興株式会社

右代表者代表取締役 大井友次

右補助参加人訴訟代理人弁護士 富岡健一

同右 四橋善美

同右 高沢新七

右補助参加人訴訟復代理人弁護士 植村元雄

同右 尾西孝志

右補助参加人輔佐人弁理士 石田喜樹

仙台市東八番丁一〇七番地の九一

四四五号事件被告 株式会社東北ニチイ

右代表者代表取締役 武田貞助

右訴訟代理人弁護士 富岡健一

同右 四橋善美

同右 高沢新七

右訴訟復代理人弁護士 瀬古賢二

同右 舟橋直昭

同右 植村元雄

同右 尾西孝志

右輔佐人弁理士 石田喜樹

福井市中央二丁目六番八号

同事件被告 株式会社熊谷組

右代表者代表取締役 熊谷太一郎

右訴訟代理人弁護士 小嶋正己

名古屋市中区栄一丁目三一番四一号

右被告二名補助参加人 大井建興株式会社

右代表者代表取締役 大井友次

右訴訟代理人弁護士 富岡健一

同右 四橋善美

同右 高沢新七

右訴訟復代理人弁護士 瀬古賢二

同右 舟橋直昭

同右 植村元雄

同右 尾西孝志

右輔佐人弁理士 石田喜樹

佐世保市元町一番二五号

八七三号事件被告 西日本商事株式会社

右代表者代表取締役 古川丹章

同右 尾西孝志

右訴訟復代理人弁護士 瀬古賢二

同右 舟橋直昭

右輔佐人弁理士 石田喜樹

箕面市船場西二丁目六番一一-一〇一号

四九六号事件被告 山本慎一

右訴訟代理人弁護士 富岡健一

同右 四橋善美

同右 高沢新七

右訴訟復代理人弁護士 植村元雄

同右 尾西孝志

同右 瀬古賢二

同右 舟橋直昭

右輔佐人弁理士 石田喜樹

宮崎市大淀四丁目六番二八号

一〇七四号事件被告 株式会社宮交シティ

右代表者代表取締役 岩満栄策

右訴訟代理人弁護士 富岡健一

同右 四橋善美

同右 高沢新七

同右 植村元雄

同右 尾西孝志

同右 小倉一之

右訴訟復代理人弁護士 瀬古賢二

同右 舟橋直昭

右輔佐人弁理士 石田喜樹

名古屋市中区栄一丁目三一番四一号

同事件被告 大井建興株式会社

右代表者代表取締役 大井友次

右被告両名訴訟代理人弁護士 富岡健一

同右 四橋善美

同右 高沢新七

同右 植村元雄

同右 尾西孝志

右訴訟復代理人弁護士 瀬古賢二

同右 舟橋直昭

右被告両名輔佐人弁理士 石田喜樹

東京都豊島区東池袋三丁目一番一号

二二五四号事件被告 株式会社西友

右代表者代表取締役 藤關勝宏

右訴訟代理人弁護士 金井美智子

同右 上田裕康

同右 塚本宏明

同右 宮崎誠

同右 久行康夫

名古屋市中区栄一丁目三一番四一号

右被告補助参加人 大井建興株式会社

右代表者代表取締役 大井友次

右訴訟代理人弁護士 富岡健一

同右 四橋善美

同右 高沢新七

同右 植村元雄

(別紙) <19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告

<12>特許公報(B2) 昭57-35348

<51>Int.Cl.3E 04 H 6/10 識別記号 庁内整理番号 7904-2E <24><44>公告 昭和57年(1982)7月28日

発明の数 1

<54>傾床型自走式立体駐車場におけるフロア構造

<21>特願 昭52-88078

<22>出願 昭52(1977)7月20日

<55>公開 昭54-22935

<43>昭54(1979)2月21日

<72>発明者 堀田正俊

愛知県西春日井郡新川町大字西堀江726番地

<71>出願人 株式会社総合駐車場コンサルタント

名古屋市中区栄1丁目31番41号

<74>代理人 弁理士 岡田英彦

<56>引用文献

特公 昭44-20021(JP、B1)

<57>特許請求の範囲

1 360°の旋回走行によつて1フロア分の高さを昇降するように上下方向に対し螺旋状に連続する車路に沿つて駐車スペースを設けてなる傾床型駐車場を構成する基準階のフロアにおいて、ほぼ等勾配に形成された内外の路縁をもつ1対の相対する傾斜平面状の直進部と、不等勾配に形成された内外の路縁をもつ1対の相対向する傾斜曲面状の直進部と、前記各直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ4つのコーナー部とにより矩形状に螺回するように形成された車路にはこの車路の外側周辺に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤと、前記直進部の内方に並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤとを臨設するとともに、前記アウトサイドパーキングエリヤには車両が車長方向に傾斜されずに駐車されるように援勾配を車幅方向に対応する方向に対し一方的に付与したことを特徴とする傾床型自走式立体駐車場におけるフロア構造。

発明の詳細な説明

本発明は、平面形状がほぼ正方形や長方形或いは、これらの類似形、すなわち矩形であつて、斜面に勾配のない方向に向けて車両を駐車させるようにした傾床型自走式立体駐車場におけるフロア構造に関するものである。

車路ばかりでなく、駐車区にも昇り勾配をつけた、傾床型自走式立体駐車場(以降傾床型駐車場と略称で示す)は、昇降のための専用傾斜路がないので駐車効率および運転フイーリングがともに良いことが一般的に認められている。従つて、傾床型駐車場の採用についての多くの要請があるが、在来の構造では敷地面積が狭すぎて傾床型の採用を断念しなくてはならない場合がある。

すなわち、傾床型駐車場では、駐車の危険度および難易度を考慮すると、駐車区の昇り勾配はだいたいtan6%以内であることが望ましく、車路の昇り勾配についてはだいたいtan17%以内であることが望ましい。勿論、駐車区の長辺方向、すなわち駐車する方向については無勾配であることが望ましく、またフロア相互の高さ寸法(階高寸法とも云う)は下限が規定され、通常は3.05m程度に設定されているのである。従つて、敷地によつては上記の通正範囲の勾配よりも急勾配にしなくては所定の階高寸法が得られないということがあり、このことによつて傾床型駐車場の採用が無理であるとされるのである。

本発明の発明者は、傾床型駐車場の広範な採用を計るべく、一定規模における斜床型駐車場の傾床勾配を緩和し、或いは狭少な敷地に対する斜床型駐車場の採用を可能ならしめようとする、一貫した設計思想の基に、現在に至るまでに多くの成果をあげてきた。

その経過を簡単に、第1図、第2図および第3図によつて述べる。第1図はごく一般的な傾床型駐車場の基準階の平面図と側面図である。この第1例は敷地の長辺方向に符号イ、ロで示すtan6%の傾床部を対向状に設け、敷地の短辺方向に符号ハ、ニで示す水平部を対向状に設けたもので、傾床部イ、ロによつて所定の階高寸法を昇るようにしたものである。従つて、第1図に示す敷地よりも長辺が短く狭い敷地では、傾床部イ、ロの勾配を急にしなくては採用することができない。第2図に示す第2例は、上述の問題点をある程度解決するもので、敷地の短辺方向の中央にさらにtan6%の局部的な傾床部ホ、ヘを設けることによつて、第1例のイ、ロの長さが短かくなる分だけ傾床部ハ、ニで担保してやろうというものである。従つて、第1例の図示の敷地に採用すれば、傾床部イ、ロの勾配を緩和させることができ、当該部の勾配をtan6%で一定とすれば、図面上の対比でも理解できるように敷地の面積が第1例よりも狭少であつても充分採用できることになる。しかし、この第2例のものも第2図に示す敷地よりもさらに長辺の寸法が小さく、長辺が短辺とほぼ等しい狭少な敷地に対しては、傾床部イ’、ロ’あるいは傾床部ハ、ニの勾配を急勾配としなくてはならない。第2例のこの点を解消したものが第3図によつて示す第3例である。第3例は、第1例の傾床部イ、ロに相当する傾床部イ”、ロ”の端部にその長さの範囲内において局部的に内側辺がtan12%のねじれをもつ急勾配車路ト、チを設けたもので、これを第2図に示す敷地に採用すれば、傾床部イ”、ロ”の勾配および急勾配車路ト、チの勾配を緩和させることができるものである。そして、傾床部イ”、ロ”および急勾配車路ト、チの勾配をそれぞれtan6%およびtan12%で一定のものとすれば、図面上の対比でも理解できるように、第2例のものよりもさらに狭少な敷地に採用することが可能となるものである。なお、第1図から第3図において、太い実線で囲まれた箇所以外は水平面となつている。

本発明は第3図に示した第3例のものをさらに改良し、傾床型としては完成形態とも云える、従つて、敷地の利用効率がもつとも秀れ、狭少な敷地に対しても採用することができ、或いは広い敷地に対しては勾配の緩和が極めて容易に実施することができる。傾床型駐車場におけるフロア構造を提供することをその目的とするものである。

次に本発明の構成を第4図以降の各図によつて示す実施例に基づいて具体的に説明する。

各図面によつて示す本発明の適用例としての傾床型駐車場は、1辺の長さが、車両1台分の駐車スペースの長辺寸法のほぼ4倍の値に車両走行スペースの幅寸法の2倍の値を加えた寸法の正方形の敷地に対する実用上最も有効と考えられる施工例を示すものであるが、本発明は少なくとも1辺の長さが、車両1台分の駐車スペースの長辺寸法のほぼ2倍の値に車両走行スペースの幅寸法のほぼ2倍の値を加えた寸法(一般に21m程度となる)の正方形、或いは他辺がこれよりも大きい長方形などのいわゆる矩形の敷地に対しても適用できるもので、各図の施工例は一例にすぎない。

初めに、第4図に示す基準階のフロアの平面図において、図示下側を前側、図示上側を後側、図示左側および右側をそれぞれ左右側と定め、以下前後・左右等の方向位置を表わす記載は、上述の定めにしたがい、或いはそれに準じるものとする。そして、駐車場の外殼にその前面中央から左廻りにA・B・C…K・L・M・Nの位置を特定するための補助符号を付ける。なお、実際の駐車場の外殼ではないが利用することができない、或いは利用しても無意味なスペースの外側の隅角部を示すために当該部に便宜上、C'・F'・L'を符号を付した。

すなわち、L'・C'、C'・F'、F'I、IL'の水平方向の寸法は互いに等しく、その1つの長さ寸法をLとすれば、Lは冒頭に述べた敷地面積の1辺の寸法で、従つて敷地面積はL2ということになる。そしてL2から{(BC×CD)+(EF×FG)+(KL×LM)}を差し引いた値が、実際に駐車場が占有する面積となるのである。BC’=CD=EF=FG=KL=LMであり、これは車両1台分の駐車スペース1における長辺の設定寸法とほぼ一致する。なお、車両1台分の駐車スペース1は図面に区画されているように長方形状で、これは国産の普通乘用車を基準に設定されたものである。駐車場の基準階の1つのフロアは、簡単に一言で云えば前後左右の矩形部分が連続螺旋状に連らなる立体構造である。すなわち、外殻の、AB、D1E、GH、JK、MNに対応するそれぞれの内側には、それぞれ外殻に沿う長方形のアウトサイドパーキングエリヤ2があり、これらのアウトサイドパーキングエリヤ2にとり囲まれた内側に一連の車路3があるのである。そして、さらに車路3のうちの左右部分の中央に臨む内側には、それぞれ左右のインサイドパーキングエリヤ4がある。外殻に沿う前後左右の4箇所の各アウトサイドパーキングエリヤ2はいずれも等しい面積で、それぞれ9個の駐車スペース1が車路3の外側4周辺に対し直交状に外接して並列され、全部で9×4個の駐車スペース1を作り出している。このアウトサイドパーキングエリヤ2はすべてtan3.68%の昇り勾配が付けられ、外殻のA点に対応する箇所を始点とすると、OP.PQ.QR.RS.STと連続的に上昇し、終点である外殻のP点に対応するT点箇所では、A点に対応する始点より階高寸法(3.05m)だけ高位となつている。各アウトサイドパーキングエリヤ2の各駐車スペース1は、いずれも内側の車路3にその短辺の1つが臨んでおり、駐車される車両の車幅方向に対応する短辺方向にはすべてがtan3.68%の昇り勾配を有するが、車長方向に対応する長辺方向には車両が車長方向に傾斜して駐車されないようにすべて無勾配となつている。アウトサイドパーキングエリヤ2と水平面とのなす角は<省略>で、<省略>となるθを上限とすることは前に述べたとおりである。本例では<省略>であるので、アウトサイドパーキングエリヤ2の勾配はまだずい分大きくなることが可能である。従つて、理論上ではアウトサイドパーキングエリヤ2の勾配をその上限である6%とすれば、AB.D1E.GH.JK.MNの長さをさらに短く、すなわち、敷地面積をこの図示例よりも狭小なものとすることが可能なのであるが、本例では、この図示例のタイプにおいては、車両の施回に困難を伴わない車路3を確保する意味で、図示の敷地を一応最小限のものとして説明する。従つて、以下に述べる車路3のスペース、および1フロア分の階高寸法の3.05mは、実施例の設定に基づくものではあるがいずれも最少限の固定値として扱うことにする。

車路3は相対向する2対の直進部と4つのコーナー部とにより矩形状に螺回し、前記アウトサイドパーキングエリヤ2の内側プロフイルに臨む外側周辺、すなわち、各直進部の外側路縁およびコーナー部の外側路縁についてはすべてアウトサイドパーキングエリヤ2と同様、tan3.68%の昇り勾配となつている。従つて、外側4周辺については、アウトサイドパーキングエリヤ2と全く同様に360°で3.05mの高位となる。しかし、車路3の内側4周辺、すなわち、各直進部の内側路縁については、360°で3.05mの高さ分だけ高位になることには違いはないが、勾配に関しては一様ではない。すなわち、外殻のA点に対応するU点からA1点に対応するV点間、W点からX点間、およびY点からZ点間まではtan13.81%の勾配を有し、この各区間を内側路緑とする1対の相対向する直進部は内外路縁の不等勾配にて傾斜曲面状に形成される一方、V点からW点間、およびX点からY点間はtan3.68%の勾配を有し、この両区間を内側路縁とする1対の相対向する直進部は内外路縁の等勾配にて傾斜平面状に形成されている。また、各直進部を直角状に接続する4つのコーナー部には各直進部の勾配を整合する傾斜曲面状の昇り勾配が形成されている。すなわち、車路3の内側4周辺は、tan13.81%のUV.WX.YZとtan3.68%のUW.XYで3.05mを上昇する構成となつているのである。従つて、U点O点A点はそれぞれ同一レベルで水平線上にあり、またV点・D2点、W点・D3点、X点・J1点、Y点・J2点は、それぞれ同レベルで水平線上の関係とされる。勿論、相対レベルは、U点からZ点に至るほど順に高くなる。なお第4図に点線で示す線は高さレベルの等しいところを結んだもので、線の間隔が勾配を示す。従つて間隔の密なほど勾配は急である。この第4図、或いは第5図によつても理解できるように、アウトサイドパーキングエリヤ2のD2D3区間と車路3のVW区間、これに対応する左側のJJ区間とXY区間の二区間ではアウトサイドパーキングエリヤ2と車路3とはtan3.68%の勾配の平面であつて、左右方向には全く勾配をもたない部分となつている。そして、この区間の各車路3の内側にそれぞれ、tan3.68%のインサイドパーキングエリヤ4が構成されているのである。このインサイドパーキングエリヤ4は、勾配の方向に3個の駐車スペース1が区分され、左右のインサイドパーキングエリヤ4で6台の車両が収容できるのである。なお、車路3におけるUV区間、WX区間、それにYZ区間の内側のtan13.81%の勾配は決して問題となる程の勾配ではないが、アウトサイドパーキングエリヤ2のAB区間、GH区間それにMN区間の勾配を少しゆるやかにしてやれば、tan13.81%よりも可也りゆるい勾配とすることができ、実際の施行ではこの方法が実施される。勿論これによつて、車路3の4個所のコーナ部5の勾配も緩和されることになり、車路3全体の運転フイーリングもさらに向上することになる。

上述の説明からも理解できるように、上述の実施例の変形例として、第4図に示す平面図において、近接する二個所のアウトサイドパーキングエリヤ2(例えばGH区間とJK区間)を含まない形式の駐車場についても支障なく施工することができ、この場合には、敷地はさらに狭少で良いことになる。

なお、第7図に1フロアに関する車路3の内側4周辺と外周4周辺の勾配を展開状態で示してあるので参照されたい。また図中符号6で示すは車路3の走行区分を示すライン、同じく7は仕切壁、8はエレベータルーム、9は非常階段を示す。そして、前述の記載から、敷地の前後方向についての寸法が長くなれば、フロアにおける勾配を前記した勾配より緩和されることになることが容易に理解できるであろう。

すなわち、本発明は、車路については、全体に昇り勾配を付けかつ、それを矩形の螺旋状に旋回連続させたもので、階高寸法を上昇するのに車路の全域を利用したものであるから、局部的な勾配部分で階高寸法を上昇する従来のものよりも、車路の勾配をゆるやかにでき、この勾配を例えば、許容限度のtan6%で一定のものとすれば、車路の全長が短かくても良いことになり、駐車場の敷地面積がより狭少でも良いことになる。とくに、車路の昇降勾配を1対の傾斜平面状の直進部と、1対の傾斜曲面状の直進部と、4つの傾斜曲面状のコーナー部とに対し合理的に配分してフロアを昇降するように構成したものであるから狭いスペース内において効果的に昇降しうる走行車路を形成しうるとともに、走行フイーリングを確保することができる。勿論、敷地面積の広い場合には、車路の全長を長くとることができるから、それだけ勾配を緩和させることができることになるのである。

図面の簡単な説明

第1図から第3図までは、傾床型駐車場に関する開発経過を、順をおつて示す基準階についての平面図、第4図は本発明の適用例としての傾床型駐車場を基準階について示す平面図、第5図は第4図のフロア構造を示す一部に断面を含む拡大斜視図、第6図は第4図の傾床型駐車場の各フロアの構成を示す側面図、第7図は車路の勾配を展開して示す説明図である。

1……駐車スペース、2……アウトサイドパーキングエリヤ、3……車路、4……インサイドパーキングエリヤ、5……コーナ部。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

第5図

<省略>

第6図

<省略>

第7図

<省略>

(別紙)

イ号物件目録

一 別紙イ号図面の説明

第1ないし第9図は、倉吉サンプラザアビルの全体を示すものであり、第1図は一階平面図、第2図は二階平面図、第3図は三階平面図、第4図は四階(基準階)平面図、第5図は四階の駐車場部分の詳細を示す平面図、第6図は同等高線図、第7図は屋上階平面図、第8及び第9図は第3図における<4>及び側の通り断面図を示す。

二 構造の説明

イ号物件たる自走式立体駐車場(駐車場棟の家屋番号・倉吉市大正町二丁目六一番二の二)は、第1ないし第4図に示すとおり、店舗棟(家屋番号・倉吉市大正町二丁目六一番二の一)の東側に隣接しており、両者は、各フロアにおいて通路で連結されている。

イ号物件は、主に上昇用車路と下降用車路、及びこれらの車路に隣接して形成される内、外のパーキングエリヤからなり、その詳細は次のとおりである。

(一) 三六〇度の左回り走行によって一フロア分の高さを上昇する平面形状が長方形の車路を、上下方向に七層連続状に重ねて上昇用車路を形成する。

(二) 三六〇度の左回り走行によって一フロア分の高さを下降する平面形状が長方形の車路を、上下方向に七層連続状に重ねて下降用車路を形成する。

(三) 各層における上昇用車路及び下降用車路は、それぞれの車路における一辺を隣接することによって共有車路を形成する。

(四) 右上昇用車路及び下降用車路の幅員は六メートルであるが、対面通行となる共有車路のみ各車路の幅員が四メートルとなっている。

(五) 基準階における上昇用車路<1>は、等勾配(四・〇六三%)に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜平面状の直進部(ABTS)と、不等勾配(一〇・八%と〇%[DE間]、一〇・八%と一三・一%[EF間]、一〇・八%と三%[FG間])に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜曲面状の直進部(DGUT)と、不等勾配(一〇・八%と三%)に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜曲面状の直進部(ZPQS)と、これら三つの直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ二つのコーナー部(BCDT及びASQR)を有している。

(六) 基準階における下降用車路<2>は、等勾配(四・〇六三%)に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜平面状の直進部(KLXW)と、不等勾配(一〇・八%と三%)に形成された内外の路縁をもつ一対の相対向する傾斜曲面状の直進部(HIWV及びXNOY)とこれら三つの直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ二つのコーナー部(IJKW及びLMNX)とを有している。

(七) 基準階における共有車路<3>は、等勾配(四・〇六三%)に形成された両側の路縁をもつ傾斜平面状の直進部(UVYZ)であり、共有車路<3>の前後端には、前記上昇用車路<1>及び下降用車路<2>における傾斜曲面状の直進部にそれぞれ連なる傾斜曲面状の分岐車路(GHVU及びYOPZ)が連設されている。

(八) 上昇用車路<1>及び下降用車路<2>における傾斜曲面状の直進部及び傾斜曲面状の分岐車路には、これら車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(イ)が臨設されている。

(九) 下降用車路<2>における傾斜曲面状の直進部には、この車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(イ’)が臨設されている。

(一〇) 上昇用車路<1>及び下降用車路<2>における傾斜平面状の直進部には、この車路の内側周辺に対し直交状に内接して並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤロが、共有車路<3>には、この車路の両側周辺に対し直交状に隣接して並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤ(ハ)が臨設されている。

(一一) 前記アウトサイドパーキングエリヤ(イ)(イ’)には車両が車長方向に傾斜されずに駐車されるように、中央の相対向する二つの駐車スペース(ニ)(ホ)を除いて、アウトサイドパーキングエリヤ(イ)は三%の、アウトサイドパーキングエリヤ(イ’)は四・〇六三%の勾配が付与されている。

(一二) 右中央の相対向する二つの駐車スペース(ニ)(ホ)には車幅方向の勾配は付与されていない。

(一三) なお、第5図における4は、エレベーターホールであり、またCDの勾配は〇%である。

第1図

1階平面図

<省略>

第2図

2階平面図

<省略>

第3図

3階平面図

<省略>

第4図

4階平面図

<省略>

第5図

<省略>

第6図

<省略>

第7図

R階平面図

<省略>

第8図

4通り断面図

<省略>

第9図

D通り断面図

<省略>

(別紙)

ロ号物件目録

一 別紙ロ号図面の説明

第1図ないし第4図は、福岡市博多区上呉服町五六九番、五六五ないし五六八番及び五七五番の土地にまたがる鉄骨造陸屋根四階建の駐車場の全体を示すもので、第1図は東面立面図、第2図は西面立面図、第3図は北面立面図、第4図は南面立面図である。第5ないし第7図は、上記建物における駐車場棟の詳細を示すもので、第5図は屋上階平面図、第6図は二ないし四階平面図、第7図は一階平面図である。

二 構造の説明

ロ号物件たる自走式立体駐車場は、主に上昇用車路と下降用車路、及びこれらの車路に隣接して形成される内、外のパーキングエリヤからなり、その詳細は次のとおりである。

(一) 三六〇度の左回り走行によって一フロア分の高さを上昇する平面形状が長方形の車路を、上下方向に五層連続状に重ねて上昇用車路を形成する。

(二) 三六〇度の左回り走行によって一フロア分の高さを下降する平面形状が長方形の車路を、上下方向に五層連続状に重ねて下降用車路を形成する。

(三) 各層における上昇用車路及び下降用車路は、それぞれの車路における一辺を隣接することによって共有車路を形成する。

(四) 右上昇用車路及び下降用車路の幅員は五・一メートルであるが、対面通行となる共有車路のみ各車路の幅員が三・三メートルとなっている。

(五) 基準階(二ないし四階)における下降用車路<1>は、等勾配(三・〇六七%)に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜平面状の直進部(ABTS)と、不等勾配(一三・九三一%と三・〇七六%)に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜曲面状の直進部(DGUT)と不等勾配(一三・九三一%と三・〇七六%)に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜曲面状の直進部(ZPQS)と、これら三つの直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ二つのコーナー部(BCDT及びASQR)を有している。

(六) 基準階(二ないし四階)における上昇用車路<2>は、等勾配(三・〇七六%)に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜平面状の直進部(KLXW)と、不等勾配(一三・九三一%と三・〇七六%)に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜曲面状の直進部(HIWV)と不等勾配(一三・九三一%と三・〇七六%)に形成された内外の路縁をもつ一つの傾斜曲面状の直進部(XNOY)と、これら三つの直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ二つのコーナー部(IJKW及びLMNX)とを有している。

(七) 基準階(二ないし四階)における共有車路<3>は、等勾配(三・〇七六%)に形成された両側の路縁をもつ傾斜平面状の直進部(UVYZ)であり、共有車路<3>の前後端には、前記下降用車路<1>及び上昇用車路<2>における傾斜曲面状の直進部にそれぞれ連なる傾斜曲面状の分岐車路(GHVU及びYOPZ)が連設されている。

(八) 下降用車路<1>及び上昇用車路<2>における傾斜曲面状の直進部及び傾斜曲面状の分岐車路には、これら車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(イ)(ロ)が臨設されている。

(九) 上昇用車路<2>における傾斜平面状の直進部には、この車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(ハ)が臨設されている。

(一〇) 下降用車路<1>における傾斜平面状の直進部には、この車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(ヘ)が臨設されている。

下降用車路<1>及び上昇用車路<2>における傾斜平面状の直進部には、この車路の内側周辺に対し直交状に内接して並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤ(ニ)が、共有車路<3>には、この車路の両側周辺に対し直交状に隣接して並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤ(ホ)が臨設されている。

(一一) 前記アウトサイドパーキングエリヤ(イ)(ロ)(ハ)(ヘ)には車両が車長方向に傾斜されずに駐車されるように、三・〇七六%の勾配が付与されている。

(一二) なお、第6図における<4>は、エレベーターホールである。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

第5図

<省略>

第6図

<省略>

第7図

<省略>

(別紙)

ハ号物件目録

一 別紙ハ号図面の説明

図面は、宮城県古川市駅前(古川市駅前大通一丁目二〇一番地一四ないし一八、同番地二七及び同番地三四所在)の駐車場における駐車場棟の平面図を示すもので、第1図は基準階(一階を除く二階から屋上の下の階まで)の平面図、第2図は一階の平面図である。

二 構造の説明

ハ号物件たる自走式立体駐車場は、主に上昇用車路と下降用車路、及びこれらの車路に隣接して形成される内、外のパーキングエリヤからなり、その詳細は次のとおりである。

(一) 三六〇度の右回り走行によって一フロア分の高さを上昇する平面形状が長方形の車路を、上下方向に連続状に重ねて上昇用車路<2>を形成する。

(二) 三六〇度の右回り走行によって一フロア分の高さを下降する平面形状が長方形の車路を、上下方向に連続状に重ねて下降用車路<1>を形成する。

(三) 各層における上昇用車路<2>及び下降用車路<1>は、それぞれの車路における一辺で隣接することによって共有車路<3>を形成する。

(四) 右上昇用車路<2>及び下降用車路<1>の幅員は五・五メートルである。

(五) 基準階における下降用車路<1>は、等勾配(三・二四%)に形成された内外の路縁をもつ二つの傾斜平面状の直進部(ABCDとEFGH)と、不等勾配(一一・一七%と三・二四%)に形成された内外の路縁をもつ傾斜曲面状の直進部CC'EE'とこれら三つの直進部の勾配を整合する二つのコーナー部(AA'CC'、EE'GG')を有している。

(六) 基準階における上昇用車路<2>は、等勾配(三・二四%)に形成された内外の路縁をもつ二つの傾斜平面状の直進部(IJKL、MNOP)と、不等勾配(一一・一七%と三・二四%)に形成された内外の路縁をもつ傾斜曲面状の直進部(LL'NN')と、これら三つの直進部の勾配を整合する二つのコーナー部(JJ'LL'、NN'PP')とを有している。

(七) 基準階における共有車路<3>は、中央部分が一五・〇%の勾配で、その両端が八・四%に形成された傾斜平面状の直進部(DKFM)であり、共有車路の前後端には、上昇用車路<2>及び下降用車路<1>の傾斜平面状の直進部にそれぞれ連なる水平な分岐車路(BIDK、FMHO)が連設されている。

(八) 基準階の下降用車路<1>及び上昇用車路<2>における外側路縁(A'J'、J'P'、G'P'、A'G')には、これら車路の外側に対し、直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(リ)(ヌ)が臨設されている。

(九) 基準階の下降用車路<1>及び上昇用車路<2>における傾斜平面状の直進部(ABCD、EFGH及びIJKL、MNOP)には、この車路の内側周辺に対し直交状に内接して並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤ(ホ)(ヘ)(ト)(チ)が臨設されている。

(一〇) 前記アウトサイドパーキングエリヤ(イ)(ロ)には車両が車長方向に傾斜されずに、車幅方向に多少傾斜して駐車されるように三・二四%の勾配が付与されている。

(一一) 基準階におけるアウトサイドパーキングエリヤ(ハ)(ニ)及び一階におけるアウトサイドパーキングエリヤ(ニ)にも車両が車長方向に傾斜されずに、車幅方向に多少傾斜して駐車されるように三・二四%の勾配が付与されている。

(一二) 基準階におけるアウトサイドパーキングエリヤ(リ)(ヌ)は、勾配を付与することなく平坦に形成されている。すなわち、これらの部分は、分岐車路も含めてQRDK、FMSTの部分が平坦となっている。

(一三) なお、各図中における<4>は、エレベーター、階段に使用されるホールである。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

(別紙)

ニ 号物件目録

一 別紙ニ号図面の説明

第1ないし第5図は、長崎市栄町五番一三号の鉄骨造陸屋根八階建の駐車場における駐車場棟の詳細を示すもので、第1図は一階平面図、第2図は二階平面図、第3図は三ないし七階平面図、第4図は八階平面図である。第5図は屋上階平面図である。

二 構造の説明

ニ号物件たる自走式立体駐車場は、主に昇降車路及び該車路に隣接して形成される内、外のパーキングエリヤからなり、その詳細は次のとおりである。

(一) 三六〇度の旋回走行によって一フロア分の高さを昇降する車路を、上下方向に八層連続状に重ねて対面通行の昇降車路を形成する。

(二) 前記昇降車路の幅員は五・五メートルである。

(三) 基準階(三ないし七階)における昇降車路<1>は、不等勾配(二・八三%と三・八〇%及び二・五〇%と三・八〇%)に形成された内外の路縁をもつ二つの傾斜曲面状の直進部(ABCDとEFGH)と、不等勾配(八・一三%と四・七五%及び八・一三%と四・五二%)に形成された内外の路縁をもつ二つの傾斜曲面状の直進部(KCLEとDIFJ)と、これら二つの直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ四つのコーナー部(BODI、MAKC、LENG、FJHP)を有している。

(四) 昇降車路<1>における傾斜曲面状の直進部には、これら車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(イ)が駐車場の一辺NP間を除いて臨設されている。

(五) 昇降車路<1>における傾斜曲面状の直進部(ABCD、EFGH)には、この車路の内側に対し直交状に内接して並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤ(ロ)が臨設されている。

(六) 前記アウトサイドパーキングエリヤ(イ)には、車両が車長方向に傾斜されずに駐車されるように、車幅方向にのみ緩勾配(MO間で二・八三%、OP間で四・五二%、MN間で四・七五%)が付与されている。

(七) なお、第3図における<2>は倉庫、<3>は階段に使用されるホールである。

第1図

1階平面図

<省略>

第2図

2階平面図

<省略>

第3図

3-7階平面図

<省略>

第4図

8階平面図

<省略>

第5図

R階平面図

<省略>

(別紙)

ホ号物件目録

一 別紙ホ号図面の説明

図面は、京都府亀岡市追分町馬場通(三番地一、一番地一、一七番地一、一七番地所在)の駐車場における駐車場棟の基準階を示す平面図である。

二 構造の説明

ホ号物件たる自走式立体駐車場は、主に上昇用車路と下降用車路、及びこれらの車路に隣接して形成される内、外のパーキングエリヤからなり、その詳細は次のとおりである。

(一) 三六〇度の左回り走行によって一フロア分の高さを上昇する平面形状が長方形の車路を、上下方向に連続状に重ねて上昇用車路を形成する。

(二) 三六〇度の左回り走行によって一フロア分の高さを下降する平面形状が長方形の車路を、上下方向に連続状に重ねて下降用車路を形成する。

(三) 各層における上昇用車路及び下降用車路は、それぞれの車路における一辺を隣接することによって共有車路<3>を形成する。

(四) 前記上昇用車路及び下降用車路の幅員は五・〇ないし五・五メートルであるが、対面通行となる共有車路のみ各車路の幅員が八・〇ないし八・五メートルとなっている。

(五) 基準階における下降用車路<1>は、等勾配(三・四八%)に形成された二つの傾斜平面状の直進部(ABCDとEFGH)と、不等勾配(一五・八%と三・四八%)に形成された内外の路縁をもつ傾斜曲面状の直進部(CC'EE')とこれら三つの直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ二つのコーナー部(AA'CC'、EE'GG')を有している。

(六) 基準階における上昇用車路<2>は、等勾配(三・四八%)に形成された二つの傾斜平面状の直進部(IJKLとMNOP)と、不等勾配(一五・八%と三・四八%)に形成された傾斜曲面状の直進部(LL'NN')と、これら三つの直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ二つのコーナー部(JJ'LL'、NN'PP')とを有している。

(七) 基準階における共有車路<3>は、不等勾配(一四・九%[DF間及びKM間]と九・五%[D'F'間=K'M'間])に形成された両側の路縁をもつ傾斜曲面状の直進部(DKFM)であり、共有車路<3>の前後端には、前記下降用車路<1>及び上昇用車路<2>における傾斜平面状の直進部にそれぞれ連なる傾斜曲面状の分岐車路(BIDK)及び水平面状の分岐車路(FMHO)が連設されている。

(八) 下降用車路<1>及び上昇用車路<2>における傾斜曲面状の分岐車路及び当該車路に連設する傾斜平面状の直進部には、これら車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(イ)が臨設されている。

(九) 下降用車路<1>における傾斜曲面状の直進部には、この車路の外側に対し、直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(ロ)が臨設されている。

(一〇) 上昇用車路<2>における傾斜曲面状の直進部には、この車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(ハ)が臨設されている。

(一一) 下降用車路<1>及び上昇用車路<2>における傾斜平面状の直進部には、この車路の内側周辺に対し直交状に内接して並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤ(ニ)、(ホ)、(ヘ)、(ト)が臨設されている。

(一二) 前記アウトサイドパーキングエリヤ(ト)には車両が車長方向に傾斜されずに、車幅方向に多少傾斜して駐車されるように三・四八%[A'J'間]の勾配が付与されている。

(一三) また、アウトサイドパーキングエリヤ(ロ)、(ハ)にも車両が車長方向に傾斜されずに、車幅方向に多少傾斜して駐車されるように三・四八%[A'G'間とJ'P'間]の勾配が付与されている。

(一四) なお、図中における<4>は、エレベーター、階段に使用されるホールである。

<省略>

(別紙)

ヘ号物件目録

一 別紙ヘ号図面の説明

第1ないし第3図は、大阪府箕面市船場西二丁目一番地三及び四所在の鉄骨造陸屋根五階建の駐車場における駐車場棟の詳細を示すもので、第1図は一階平面図、第2図は二ないし五階平面図、第3図は屋上階平面図である。

二 構造の説明

ヘ号物件たる自走式立体駐車場は、主に昇降用車路及びその車路に隣接して形成される内、外のパーキングエリヤからなり、その詳細は次のとおりである。

(一) 三六〇度の旋回走行によって一フロア分の高さを昇降する車路を、上下方向に五層連続状に重ねて昇降用車路を形成する。

(二) 基準階(二ないし五階)における昇降用車路は、等勾配(二・七一%)に形成された内外の路縁をもつ二つの傾斜平面状の直進部(ABCDとEFGH)と、不等勾配(二・七一%と九・八九%)に形成された内外の路縁をもつ二つの傾斜曲面状の直進部(KCLEとDIFJ)と、これら四つの直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ四つのコーナー部(BODI、MAKC、LENG、FJHP)を有している。

(三) 前記昇降車路の幅員は、等勾配に形成された内外の路縁をもつ傾斜平面状の直進部は五・六メートル、不等勾配に形成された内外の路縁をもつ傾斜曲面状の直進部は七・一メートルである。

(四) 昇降用車路<1>における傾斜平面状の直進部(ABCD、EFGH)及び傾斜曲面状の直進部(KCLE、DIFJ)には、これら車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(イ)が臨設されている。

(五) 昇降用車路<1>における傾斜平面状の直進部(ABCD、EFGH)には、この車路の内側に対し直交状に内接して並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤ(ロ)が臨設されている。

(六) 上記アウトサイドパーキングエリヤ(イ)には、車両が車長方向に傾斜されずに駐車されるように、車幅方向にのみ緩勾配(二・七一%)が付与されている。

(七) なお、第2図における<2>は、階段に使用されるホールである。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

(別紙)

ト号物件目録

一 別紙ト号図面の説明

図面は、宮崎市大淀四丁目四三一番の鉄骨造陸屋根四階建の駐車場における基準階(二階ないし四階)の平面図である。

二 構造の説明

ト号物件たる自走式立体駐車場は、主に昇降用車路、及びその車路に隣接して形成される内、外のパーキングエリヤからなり、その詳細は次のとおりである。

(一) 三六〇度の旋回走行によって一フロア分の高さを昇降する車路を上下方向に五層連続状に重ねて昇降用車路を形成する。

(二) 昇降用車路の幅員は六メートルである。

(三) 基準階(二ないし四階)における昇降用車路<1>は、等勾配(三・四九四%)に形成された内外の路縁をもつ傾斜平面状の直進部(EFGH)と中央に向って車両の昇り方向及び下り方向のいずれからも〇・五%の昇り勾配をもつほぼ水平な直進部(ABCD)と不等勾配(三・四九一%と九・五%)に形成された内外の路縁をもつ二つの傾斜曲面状の直進部(JCKEとDCFP)と、これら四つの直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ四つのコーナー部(IAJC、KEMG、BNDC、FPHQ)を有している。

(四) 昇降用車路<1>における傾斜平面状の直進部(EFGH)とほぼ水平な直進部(ABCD)及び傾斜曲面状の直進部(JCKE、DCFP)には、これら車路の外側に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)が臨設されている。

(五) 昇降用車路<1>における傾斜平面状の直進部(EFGH)とほぼ水平な直進部(ABCD)には、この車路の内側に対し直交状に内接して並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤ(ホ)、(ヘ)が臨設されている。

(六) 上記アウトサイドパーキングエリヤ(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)には車両が車長方向に傾斜されずに駐車されるように、車幅方向にのみ緩勾配((イ)は〇・五%、(ロ)は三・四九四%、(ハ)及び(ニ)は三・四九一%)が付与されている。

(七) なお、コーナー部(FPHQ)には、袋小路となった車路(RSTU)が延設されており、この車路の外側には車路に対し直交状に外接して並列された駐車スペース群よりなるアウトサイドパーキングエリヤ(ト)、(チ)が臨設されている。

(八) 図中における<2>は、階段である。

<省略>

(別紙)

先使用物件目録

1 図面の説明

図面は、丸大百貨店駐車場(新潟市上大川前通6番町)における基準階の主要部を概略的に示した平面図である.

2 構造の説明

先使用物件たる連続傾床型自走式立体駐車場は、主に、昇降車路と該車路に隣接して形成される駐車スペースとからなり、その詳細は次の通りである.

(1)昇降車路は、360度の旋回走行によって1フロア分の高さを昇降するよう、上下方向に対し7層螺旋状に連続形成されている.

(2)基準階における昇降車路<1>は、等勾配(3.49%)に形成された内外の路縁をもつ1対の相対向する傾斜平画状の直進部(LMPK・NEFO)と、不等勾配(11.18%と1.37%)に形成された内外の路縁をもつ1対の相対向する傾斜曲面状の直進部(BCNM・OHIP)と、これら各直進部の勾配を整合する傾斜曲面をもつ4つのコーナー部(ABML・CDEN・FGHO・IJKP)とを有している.

(3)昇降車路<1>には、この車路における3つの外側周辺(AD・DG・GJ)に対し直交状に外設して並列された駐車スペース群によりなるアウトサイドパーキングエリヤ(イ)(ロ)(ハ)と、前記傾斜平面状の直進部の内方に並列された駐車スペース群よりなるインサイドパーキングエリヤ(ニ)(ホ)とが臨設されている.

(4)前記アウトサイドパーキングエリヤ(イ)(ロ)(ハ)には、車輌が車長方向に傾斜されずに駐車されるように、アウトサイドパーキングエリヤ(イ)(ハ)には1.37%の、アウトサイドパーキングエリヤ(ロ)には3.49%の緩勾配を車幅方向に対応する方向に対し一方的に付与されている.

<省略>

<省略>

(別紙)

算定書1

<省略>

・スキップ工法による基準階の台当り床面積は、

((1939.73/75)*2+(1728.93/75))/3=24.92618m2

∴イ号による増分58台をスキップ工法の基準階に収容するために必要な増築費は、

24.92618*58*50,000=72,285,916円

※但し、増築費は50,000円/m2

(別紙)

算定書2

<省略>

※但し、建築費は50,000円/m2を基に算出

・スキップ工法による基準階の台当り床面積は、

776.14/26=29.85153846m2

∴イ号による増分53台をスキップ工法の基準階に収容するために必要な増築分費用は、

29.85153846*53*50,000=79,106,577円

∴イ号の実施により被告らが受けた利益額は、

79,106,577+271,649,000-263,585,000=87,170,577円

(別紙)

算定書3

<省略>

※但し、建築費は50,000円/m2を基に算出

・スキップ工法による6階の台当り床面積は、

1456.211/42=34.67169048m2

∴イ号による増分74台をスキップ工法の7、8階に収容するために必要な増築分費用は、

34.67169048*74*50,000=128,285,255円

∴イ号の実施により被告らが受けた利益額は、

128,285,255+453,376,300-441,855,300=139,806,255円

(別紙)

算定書4

<省略>

※但し、建築費は50,000円/m2を基に算出

・スキップ工法による基準階の台当り床面積は、

1448.948/60=24.14913…m2

∴イ号による増分36台をスキップ工法の基準階に収容するために必要な増築分費用は、

24.14913*36*50,000=43,468,440円

∴イ号の実施により被告らが受けた利益額は、

43,468,440+362,237,000-350,717,000=54,988,440円

(別紙)

算定書5

<省略>

・スキップ工法による基準階の台当り床面積は、

1937.81/85=22.7986m2

∴イ号による増分36台をスキップ工法の基準階に収容するために必要な増築費は、

22.7986*35*50,000=39,897,550円

※但し、増築費は50,000円/m2

特許公報

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

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